SAPジャパン株式会社は5日、SAP S/4HANA Cloudに対応したAll-in-Oneパートナーパッケージプログラムを提供開始したと発表した。
同日に行われたプレスセミナーでは、新パッケージプログラムを提供する背景やプログラム内容について説明したほか、ニチバン株式会社による中期経営計画実現に向けたSAP S/4HANA Cloud導入事例を紹介した。
顧客企業の投資効果の最大化を目指すパッケージプログラム
今回提供開始するAll-in-Oneパートナーパッケージプログラムは、日本の中堅企業向けにさまざまな業種に対応したSAP S/4HANA Cloudの「導入範囲」「期間」「費用」のモデルケースを提示することで、パートナー各社とともに顧客企業の投資効果の最大化を目指すもの。リリース時には、組立製造、プロセス製造・医薬、商社卸、プロフェッショナルサービスの各業種に対応したパートナーテンプレートを提供する。
新パッケージプログラムを提供する狙いについて、SAPジャパン バイスプレジデント ミッドマーケット事業統括本部長の田原隆次氏は、「当社では、2月に開催した2022年のビジネス戦略に関する記者会見の中で、国内企業数の99.7%を占める中堅中小企業向けの販売体制を拡充するために、100%パートナー企業による間接販売を推進していく方針を打ち出した。今回、この方針をさらに推進するべく、『SAP S/4HANA Cloud対応All-in-One』をリリースする。現在、SAP S/4HANAは、中堅企業の幅広い業務領域で採用されており、多くの企業が限られたリソースの中でシンプルかつ短期に導入し、早期の効果創出と投資対効果の最大化を目指している。このプロジェクトを実現する重要なファクターの一つがパートナーテンプレートの活用であり、『SAP S/4HANA Cloud対応All-in-One』では、これを各業種に対応したパッケージプログラムとしてパートナーから提供していく」と説明した。
パッケージプログラムの主な特長としては、「成功するプロジェクトの進め方(方法論)がパートナーの過去の経験をもとにまとめられている」、「対象業種が細業種にわたって明確化されている」、「各業界・業務範囲別に、事前定義された業務プロセスと機能群を用意している」、「パートナー独自のノウハウ・アセット・各種導入ツールを活用することができる」、「導入期間が明示され、12カ月程度で完了できる」、「導入費用(SAP S/4HANA Cloudサブスクリプション費用を除く)が明確になっている」ことを挙げた。
中堅企業は、DX戦略の施策として、このパッケージプログラムを活用することで、実現範囲を正確に理解、合意したうえで導入プロジェクトを開始でき、また、プロジェクト進行にともなう追加費用の発生を抑えられるため、低リスク型クラウドERP導入モデルの実現が可能となる。
まずは、組立製造、プロセス製造・医薬、商社卸、プロフェッショナルサービスの各業種を対象とし、パッケージプログラムに賛同するアイ・ピー・エス、NTTデータ グローバルソリューションズ、コベルコシステム、JSO、SHINコンサルティング、ビジネスエンジニアリング、日立システムズ、フォーカスシステムズ、フリーダムの各パートナーを通じて順次提供していく。
また今回のプレスセミナーでは、ゲストスピーカーとして、ニチバン 執行役員 経営企画室 情報システム部長の奥山尚氏が、「中期経営計画実現のためのIT戦略」について、SAP S/4HANA Cloudの導入事例を交えて紹介した。
「当社は、2018年に創業100周年を迎え、次のステップに向けた『ありたい姿』の実現に向けて、中長期ビジョン『NICHIBAN GROUP 2030 VISION』と、中長期ビジョン実現の礎となる中期経営計画『ISHIZUE 2023~SHINKA・変革』を策定した。その中で、ITにおける重点取組テーマとして、『事業戦略推進に向けたAI・IoTの積極活用』を掲げるとともに、DX成熟度のステップアップと経営・事業要件達成度の増加を目指してきた」という。「DX成熟度については、会計系および生産系(購買含む)のリリースにより、2021年に一気にステージ3にレベルアップした。さらに2022年の販売系のリリースを経て、ビジネスへのIT活用に対する慣れと意識が向上することで、2023年度には目指すべきステージ4に到達できる」との考えを示した。
具体的なIT戦略では、2023年度に目指すべきITの姿として、「基幹システムをグローバル標準のERPに刷新することで、基幹業務の整理(業務の特徴や形態を見極めたうえでの構造化/標準化)とシステム/データの統合(構造化と標準化)を実現し、戦略的にデータを活用する」と設定。これに向けて、同社の要求に適合する製品と導入ベンダーの選定を行ったという。
「選定にあたって重視したポイントは、テンプレートの使用により、短期間で品質の良いシステム導入を実現できることと、海外でも国内と同様に利用できる、グローバル対応のシステムであることだった。そして、選定の結果、SAP S/4HANA Cloudと、アイ・ピー・エスが提供するERPテンプレート『IPS EasyOne』を採用し、短期間での新システムの導入を達成した」としている。
SAP S/4HANA Cloudの短期導入を実現できた要因としては、「トップダウンによる全社への意識付け」、「導入前の準備工程で、調査・計画立案をきちんと実施」、「標準機能およびテンプレートの徹底活用」、「プロジェクト憲章によるメンバーの意識統一と判断基準の明確化」を挙げた。
さらに今後の展開について、奥山氏は「新システム稼働後の課題として、機能の標準化にともない、多くの既存業務の手順変更や、個別最適化された機能の削減などによる、業務効率の低下が発生している。今後、基幹システム運用プロジェクトを立ち上げ、新基幹システムの安定運用と活用のための改善活動を進めていく」と述べた。
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