専門学校生が高校生に教える実証講座を導入し
双方の成長を促す
デジタル化の進展に対応して、宮崎県の商業高校の情報系学科のカリキュラムは高度化している。システム系については、従来のプログラミング等に加えて、AI、データサイエンスなどもカリキュラムに導入され、高校1年時からPythonがプログラミング言語として取り入れられている。クリエイティブ系については、ハイスペックパソコンとクリエイティブ系ソフトが導入され、コンテンツ分野の科目の充実が図られている。
こうしたカリキュラムの高度化に合わせて、教員のレベルアップが課題となっている。高校に限らず専門学校でも、AI、データサイエンスなどの指導ノウハウの向上、クリエイティブ系における実習・作品制作中心のカリキュラムへのシフトなどが求められている。
本事業では、これらの課題を解決するために、高校段階、専門学校段階でそれぞれ習得すべき内容を企業の支援のもと整理した上で、高校から専門学校までの一貫した5年間の教育プログラムの開発に取り組んでいる。事業の推進にあたって専門学校は、高校教員の研修会実施、専門学校教員による特別授業の開催、高校段階での教育プログラム開発支援などを行いつつ、企業と高校の間に入って、企業側のニーズを高校生に対してわかりやすく伝えるように工夫している。ニーズにマッチする先進的で高度なスキルを身に付けた人材を地域IT産業が確保できれば、「県内で育った人材が県内の企業で働く」という流れができ、県外への人材流出という行政課題の解決にも結び付くからだ。
令和5年度活動事例
【実証講座】
令和5年度は、前年度まで実施してきた若手社員も参加するIT企業による高校1年生を対象としたシステム系の実証講座や、Web制作会社による高校1年生を対象としたクリエイティブ系の実証講座を引き続き実施した。
加えて、高校2年生を対象にした専門分野をワークショップや演習で体験する講座では、専門学校生に高校生を指導する立場で実証講座に参加してもらった。
例えば、宮崎県立富島高等学校では次のようなプログラムで専門学校生を巻き込んだ実証講座を実施した。
対象: | 情報ソリューション科2年生(プログラミングコース)20名程度 | ||||||||||
講師: | 宮崎情報ビジネス医療専門学校 教員1名、情報システム科1年生7名 | 時間: | 50分✕4コマ(3~6限目) | 内容: | 前半2コマ | ・DX体験(Pythonを使ったWord、Excelの操作) ・専門学校生が講師(他の学生はサポート) |
: | 後半2コマ | ・DS体験(Pythonを使った自然言語の形態素解析) ・専門学校教員が講師(専門学校生はサポート) |
受講後にはアンケートを取った。高校生に「専門学校生のサポートがあることで、いつもの授業と比べてどうだったか」を尋ねたところ、「いつもより、とても理解しやすかった」という回答が6割を超えた。「わからないときは近くの専門学校生がすぐ教えに来てくれたので、わかりやすかった」という意見も寄せられた。
一方、専門学校生には「今後、高校生に教える機会があったら、またやりたいと思うか」と尋ねたところ、「どちらかというとやりたい」という回答が8割を超えた。高校生に教える中で、発生したプログラムのエラーに対応できなかった自分を反省する声が数多く寄せられており、現場の講師からは「実際に仕事をし始めた時にも、現場でバグ探しをすることはよくある。それらを探せる洞察力や思考力を向上させる良い機会になったのではないか?」とのコメントがあった。
なお、宮崎県立富島高等学校の教師からは「高校生にとって、専門学校生はイメージしにくいところがあるが、今回サポートに入ってくれた学生とコミュニケーションを取り合うことで進路について意識し、学習意欲をさらに引き出すことができたのではないか」との評価を得られた。
さらに、企業からは「専門学校が学生を連れて、実証講座に取り組んだことは、これからのIT人材の教育スキームの重要なポイントになるのではないかと思った。今の高校生が専門学校に進学した際に、この事業が継続されていれば、先輩という立ち位置で後輩を教えるスキームができるし、体験した学生を交えて、カリキュラムの内容をもっと高校生の目線でブラッシュアップできたりするのではないか。この体験は社会人になるにあたり、大きなマインド形成につながる」と期待の声が寄せられた。
【コンソーシアムの連携強化】
高等学校、専門学校、企業、行政からなるコンソーシアムの連携を深めるために、令和5年度はセミナーを開催した。コンソーシアムメンバーが約40名参加して議論を重ね、例えば、キャリア教育の進め方については「目標のある生徒とそうでない生徒の差が大きい。今回の高専連携を生かして、キャリア教育を実施していきたい」といった意見、コンソーシアムのあり方・広げ方については「6年間の事業が終わって、7年目以降もつながっていないと意味がない。継続的な取組には行政の力も必要」といった意見が出された。
高校教員向けの研修会も実施した。昨年度まではコンソーシアムに参加している4校を対象にしていたが、今年度からは宮崎県商業教育研究会と連携することで、対象を同研究会加盟の22校に拡大。とくにクリエイティブ系の研修会については、1講座当たり昨年度の10人程度から20人程度に増加した。
なお、システム系では次のようなプログラムを実施した。
講師:株式会社デンサン
1日目 Pythonプログラミング基礎 (11名参加)
2日目 Pythonプログラミング応用・機械学習 (7名参加)
クリエイティブ系では次のようなプログラムを実施した。
講師:デジタルハリウッド大学
1日目 静止画編集(Illustrator、Photoshop) (20名参加)
2日目 動画編集(Premiere Pro、After Effects) (22名参加)
令和6年度以降に向けて
令和6年度以降も引き続き、専門学校教員や企業による実証講座、高校段階での教育プログラム開発支援、高校教員の研修会や企業と高校をつなぐコンソーシアムの連携強化などを引き続き推進していく。
また、令和5年度に実施した実証講座のうち、専門学校生が参加する講座については一定の成果が得られた。そのため、より精緻な検証をした上でブラッシュアップを進め、令和6年度には、「高校生と専門学校生が困っていることを自分たちで見つけて、一緒に問題解決に取り組むような講座」を実施したいと考えている。
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