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AIでプログラムができても人間はアルゴリズムを学ぼう - ITpro

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 2024年1月1日、プログラミング言語Pascalの開発者、ニクラウス・ヴィルト氏の訃報が伝えられた。筆者が初めて習ったプログラミング言語はPascalだった。1979年に大学生となり、おそらく1年の時に学んだはずである。45年近く前、コンピューターのエンジニアになろうと意気込んでいた。

 教えてくださったのは著名な森口繁一先生であり、森口先生が書いた教科書を読んだ記憶がある。ところが今、インターネットを検索してみると森口先生の著書『Pascalプログラミング講義』(共立出版)は1982年の出版となっている。講義を受けた時は別の本で学んだのかもしれない。そういえば構造化プログラミングに関する翻訳書を買った気がする。

 四十数年前にもAI(人工知能)はそれなりに話題だった。自然言語処理と呼んでいたと思う。そちらのほうを勉強しようと『LISP入門』(培風館)、『Prologプログラミング入門』(オーム社)を買った。だが、こちらも調べてみると前者は1982年、後者は1989年の出版となっている。Prologの本も学生の時に買ったはずなのだが、記憶があやふやになっているようだ。

 LISPとPrologの本の著者は黒川利明氏であった。社会人になり21世紀になってから黒川氏に会った。2004年、2005年あたりにある会合で定期的にお会いし、いろいろな話を聞いた。黒川氏の本で学んだ言語を駆使するプログラマーになり、教科書の著者と技術について深い話をした、と書けるとよかったのだが、残念ながらプログラミングの才能がないことに気付き、理工系の勉強をしておきながら記者になってしまったので、黒川氏の話を拝聴するばかりだった。

 昨年(2023年)、久々に会ったところ、「いえ、谷島さんに初めて会ったのは1992年です」と言われてしまった。どういう意味があるのか分からないが黒川氏は人とのやりとりをPCにメモとして残している。実際に見せてもらったが、そこには「2004/02/09 Kさんの紹介、革新的なソフト(やサービス)を作れない、1992年にIBMで会っていた」と書かれていた。

 黒川氏は約13年おきに仕事を変えてきた。LISPやPrologの本を書いていたときは東芝の研究者、その後、日本IBMへ移り、さらにCSK(現SCSK)に転じ、コンサルタントの仕事をした。1992年に会ったときは日本IBMにいたというが、こちらには覚えがほとんどない。

10年後の世界を予測

 黒川氏について最も印象的なのは、何といっても2005年に行われたあるプレゼンテーションである。手元に資料が残っている。発表日は2005年12月13日、題名は『十年後のソフトウェア工学 情報システムの立場から』となっている。肩書はCSKフェローであった。

 この発表の件は何度か書いたことがある。題名通り、「ソフトウェア工学の十年後」として10点の予測が語られた。列挙してみよう。

  • ソフトウェア工学はシステム工学に統合される
  • システム工学は大学・高校の基礎科目となる
  • システムインテグレーションだけを扱う企業は無くなる
  • 通常のプログラミングはソフトウェア設計に吸収される
  • ソフトウェア構築の主要作業は部品検索になる
  • ソフトウェア工学の中心作業は要求の記述と管理になる
  • ユーザの不満を自動収集する機能の開発が進められる
  • システムの自己評価機能がプログラムに組み込まれる
  • ソフトウェアにエネルギー・環境基準が導入される
  • 大規模ソフトウェアの信頼性評価のため、ソフトウェアに信頼確率が導入される

 2005年に黒川氏は「2015年にこうなる」と述べたわけだが、18年たった今読み直してみても10点の予測は刺激的で、原稿を10本書けそうな気がする。

 10点のうち、3点ほどは自動プログラミングの時代になるという予測が前提になっている(要求のまとめと設計が仕事の中心、ソフト部品検索が主、といったあたり)。現在、いわゆるノーコード/ローコード開発ツールが使われ、オープンソースの部品が世界中で公開されている。そして生成AIによるプログラミングの自動化が視野に入ってきた。

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