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H3打ち上げ失敗、過電流を自己診断プログラムが検知して電源を遮断か - ITpro

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年3月16日、文部科学省の「宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合」で、同年3月7日に打ち上げに失敗した次期主力ロケット「H3」初号機の事故調査の経過を報告した。

打ち上げられたH3ロケット初号機

打ち上げられたH3ロケット初号機

H3初号機は地球観測衛星「だいち3号」を搭載し、2023年3月7日午前10時37分55秒に種子島宇宙センターから打ち上げられた。第1段の燃焼終了・分離までは正常に飛行したが、第2段エンジン「LE-5B-3」が着火しなかったために午前10時51分50秒にミッション達成の見込みなしとして指令破壊コマンドを送信。打ち上げは失敗した。衛星と第2段は、分離した第1段と共に、フィリピン東方沖海域に落下した。(写真:松浦晋也)

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 H3初号機は、第1段分離までは正常に飛行したが、第2段エンジン「LE-5B-3」が着火せず、打ち上げに失敗した。JAXAの報告によると、第2段の制御系がエンジン起動に使う電力系に過電流を検知して、電源を遮断したと判明した。回路の短絡などで本当に過電流が発生したのか、それとも制御系の誤検知かは現状では不明だ。今後JAXAは、既に完成しているH3の2号機機体や、開発時に使用した試験モデルを使って実験を実施して、第2段電源系の詳細な分析を進める。

打ち上げの概要

打ち上げの概要

第2段が点火しなかったので、衛星を搭載した第2段は弾道飛行で最高点に達した後に落下した。MECO:第1段主エンジン燃焼停止、SELI:第2段エンジン立ち上がり検知、SECO:第2段エンジン燃焼停止を意味する。(出所:JAXA)

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 H3の第2段エンジンを制御する仕組みは以下の通りだ。第2段エンジンは、大きく「電気系」「2段エンジン系」の2系統がそれぞれ情報の流れの上流と下流を担う構成で制御されている。

 電気系は機体に搭載されており、機体の姿勢を保ちつつ飛行を制御するもの。同時にエンジンで使用する電力を監視・制御する。2段エンジン系は第2段エンジンに搭載されていて、電気系から届くコマンドに応じて実際のエンジンの動作を担う。

H3第2段の機体を制御する電気系とエンジン系の関係

H3第2段の機体を制御する電気系とエンジン系の関係

電気系はA系とB系から成る二重の冗長構成になっていて、冗長系を持たないエンジン系を制御する。(出所:JAXA)

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 電気系は、A系とB系の冗長構成で信頼性を確保している。いずれの系統も同じ構成で同じ動作をする。通常はA系が機体を制御し、A系にトラブルが発生した場合にはB系に切り替わる。

 それぞれの系統はいずれも機体全体を制御する「2段機体制御コントローラ」(V-CON2)を頂点に、その下にエンジンを制御する「2段推進系コントローラ」(PSC2)が付き、エンジン系への動作の指示と電源の監視・管理を行っている。

 電源は低圧の「制御電源」と高圧の「駆動電源」の2系統だ。制御電源は第2段エンジン系の電子機器を駆動する。駆動電源はエンジン着火系(エキサイタ)やエンジン回りの高圧ガス配管のバルブを動かすソレノイド、噴射方向を制御するアクチュエーターなどを駆動する。

 2段エンジン系は、「コントロールボックス(ECB)」と「ニューマティックパッケージ(PNP)」から成る。ECBはエンジン単体についての“頭脳”だ。PSC2からの信号を受けてエンジン全体を制御する。PNPは決め打ちのシーケンスでバルブやスイッチ、エキサイタ(ガソリンエンジンでいうプラグに相当)などを動かすシーケンサーだ。ECBからのコマンドでエンジンの点火機構や配管各部のバルブへの電流オン/オフを適切なタイミングで行う。

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