「読みにない好手を多く指され、勉強になった」。勝利の中にも反省材料を求める普段通りの受け答えが、史上初の快挙すら通過点であることの証しだった。20日、将棋の第61期王位戦7番勝負(東京新聞主催)を制し、18歳1カ月の高校生棋士、藤井聡太が二冠となった。列島が祝福ムードに沸き立つ中、一番冷静だったのは藤井自身だったかもしれない。
3年前も、藤井は喧騒のただ中にいた。2017年6月、デビューから負けなしで史上最多の29連勝を記録。18畳の対局室に100人の報道陣が殺到する「超過密」状態で、中学生の藤井は平然と感想戦を続けていた。
◆将棋界の「救世主」
実は当時、将棋界は屋台骨が揺らぐ「緊急事態」にあった。トップ棋士の不正疑惑の処理をめぐって日本将棋連盟の対応に批判が集まり、同年2月、会長以下、5人の理事が辞任または解任となった。その後、連盟の専務理事となった脇謙二(60)は「棋士たちがバラバラになってしまった」と振り返る。同4月には時の名人が初めて将棋ソフトに敗北。棋士の多くが「存在意義がなくなるのでは」と不安を漏らしていた。
しかし、スターの登場が空気を一変させた。将棋を知らない人も、あどけない「藤井君」の活躍に目を細めた。対局時の昼食メニューや幼少期に遊んだおもちゃに注目が集まり、各地の将棋教室は満員に。「内輪もめはやめようと棋士が一つにまとまった。まさに救世主が現れた感覚だった」と脇は実感を込める。
藤井の下には、各企業からCM出演やスポンサー契約の依頼が続々と舞い込んだ。しかし連盟は藤井の意向を確認の上、すべて断った。「今は棋力を付ける時期。長い目で見て、高校卒業までは全力で守ろうと意見が固まった」(脇)
◆コロナ禍でヒーロー再来
コロナ禍で国全体が「緊急事態」に陥った今夏、ヒーローは再来した。少年は高校生となり、周囲の期待を上回る速度で進化を遂げていた。棋聖戦、続いて王位戦への挑戦を決めると、瞬く間に両タイトルを手中に収めた。暗いニュースが続く中、各メディアは藤井の一挙手一投足を詳細に伝えた。「勢いでなく、確かな実力を備えてのタイトル獲得。沈みがちな社会に明るい話題を提供できたとしたら、将棋界としてもありがたい」と連盟会長の佐藤康光(50)は語る。
「あと10年で僕がタイトル取るのは難しいかな」。東京で子ども向け教室を開くプロ棋士、高野秀行(48)は藤井の棋聖獲得直後、生徒がそう話すのを聞いた。「『近所のお兄ちゃん』を応援する感覚のようだ」。コロナ禍でも、教室には体験入会の申し込みが引きも切らない。「藤井二冠の将棋には同じプロでも魅了される。同時代に見られることを幸せに感じる」(敬称略)
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史上最年少で二冠を獲得した藤井聡太王位。社会現象ともなった偉業の背景と今後の展望を、関係者の証言でたどる。
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