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アマゾンが「新配達プログラム」を打ち出す事情 - Au Webポータル

12月19日、アマゾンは新しい配送プログラム「Amazon Hub デリバリーパートナープログラム」を発表。説明会にはアマゾンロジスティクスのシング事業本部長(右から2番目)と、参加している店舗オーナーたちが登壇した(撮影:尾形文繁)

写真館や新聞配達店、生花店など、地元店のオーナーたちが「アマゾンの配達員」になるーー。アマゾンジャパンは12月19日から「Amazon Hub デリバリーパートナープログラム」(以下、ハブプログラム)と呼ぶ配達システムを始めた。

地元に店舗を構える中小企業のオーナーを対象にしたもので、店舗から最長2キロ圏内の配達を委託する。「火曜日と金曜日に30個ずつ運ぶ」など、働く時間や仕事量を自由に設定できる。店舗に荷物の保管スペースがあり、空き時間があればすぐに始められる点が売りだ。1日平均30~50個の配達が目安になる。

海外ではインド、メキシコ、スペインで導入されており、国内は2020年9月から実証実験がスタート。都市部を中心に数百店舗が配達に取り組んでいる。アマゾンのスタッフが店舗オーナーに電話したり、直接声をかけたりして、副業需要を取り込んできた。

オーナーは自分の店の宣伝も可能

今回は副業用のプログラムであるため、オーナーたちは配達の際に自分の店の宣伝をすることも自由だという。

説明会に登壇した濱田良太さん(大阪府)は「居酒屋と卸売業を営んでいる。配達先で『兄ちゃん、この商品どう?店はどうなん?今度行くわなー』とか声をかけてもらうなど、商売の宣伝につながっている」と話す。

荷物1個あたりの報酬は決められているが、詳細は明らかにされていない。トラブルなどで当日中に配送できない場合は、アマゾンが荷物を引き取り、別ルートで配達する。現在は東京、千葉、神奈川、大阪、京都、兵庫、愛知、福岡で展開しており、今後は広く募集・営業をかけて全国に広げる考えだ。

ハブプログラムを導入する背景には、年々増え続ける荷物量の増加がある。これまで、アマゾンの配送チャネルは3つだった。

①ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便など宅配便の大手各社。②地域限定で配送を行う「デリバリープロバイダ」と呼ばれる配送会社。③2019年に開始した、アマゾンが直接個人ドライバーに委託する「アマゾンフレックス」。これら3つのうち、どの方法が一番早く届けられるか、システムで判断し荷物を振り分けているという。

増え続ける荷物量に対応して、デリバリープロバイダ各社は配達能力の増強を進めているが、そう簡単ではない。人手不足を背景にドライバーを取り合っており、車両を増やそうにも増やせない実情があるからだ。

配達能力と配送効率の向上を狙う

ハブプログラムは、配達能力と同時に配達効率の向上も狙っている。入り組んだ商店街やタワーマンションなどの高い建物は、配達効率が低下する原因となる。今回、そうした場所については、地元をよく知るオーナーたちに自転車や徒歩で配達してもらうことを想定しているようだ。こうした新たな配達の担い手ができれば、地域の配達を担うデリバリープロバイダの配送効率の引き上げにもつながる。

あるデリバリープロバイダ幹部によれば、ドライバーが配達できるのは1日平均150~160個程度だが、アマゾンはその2割アップぐらいを要求してくるという。ただ、荷物を多く積めば時間もかかり、厳しい労働環境となるリスクもある。「ハブプログラムは、そうしたわれわれの声も考慮されているのではないか」(同)。

コロナ禍で一段と伸びたEC需要は、人々の外出が増えても高水準で推移している。ハブプログラムを駆使し、全体の配達能力と効率を引き上げていくことが、アマゾンの当面の重点課題となりそうだ。

ハブプログラムによって、全体の配達効率をどう上げていくのか。アマゾンジャパンの配達を統括するアマゾンロジスティクスの事業本部長、アヴァニシュ・ナライン・シング氏に聞いた。

Awanish Narain Singh/PepsiCo社で18 年間セールス、マーケティングなどを担当し、その後Nokiaに入社。2015 年にAmazonに入社し、営業・チャネル戦略、ブランド管理・消費者調査、サプライチェーン・顧客管理などを担当。インドでラストマイル配送ネットワークの拡大に注力。2018年に日本のアマゾン・ロジスティクスのカントリー・ディレクターに着任(撮影:尾形文繁)

――ハブプログラムを日本でも始めた背景を教えてください。

地域のビジネスのオーナーが自由な時間で配達でき、投資も必要なく、今の経営資源で副業ができる。3カ国で展開しているが、市場調査で起業家や中小企業の数などを確認し、日本も非常に適していると判断した。実証実験でよいフィードバックが寄せられたことも大きい。

――コロナ禍で実証実験を進めた理由は?

正直に言って、2019年初頭まではデリバリーステーション(ドライバーに荷物を引き渡し、各所へ配送するための拠点)が1カ所しかなかった。

その後急ピッチで投資を進め、現在では全国で45カ所まで拡大した。このサービスはインフラが重要。インフラの整備によって、中小オーナーを支援し、安全に収入を増やせるプログラムを提供できるようになっている。

――プロのドライバーによる配達を増やすほうが安定的に運営できる面もありそうですが。

私たちも計画を立てるときにその点について議論した。重要なのは安全に早くお客様に荷物を届けることだ。戦略的パートナー(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)も、デリバリープロバイダも、個人ドライバーに委託するフレックスも、いずれも成功している。それぞれのバランスをとることが重要だ。

ハブプログラムは倍々に成長する

フレックスはドライバーが業務用の軽貨物車両を所有し、デリバリーステーションで荷物をピックアップする必要がある。ハブプログラムでは、デリバリーステーションからトラック(2トンと4トン)で各オーナーの店舗に荷物を届け、そこからオーナーに配達してもらう。フレックスとは意味合いが異なる。

ハブプログラムを発表するシング氏。同プログラムは地元店のオーナーの副業を支援する試みでもある(撮影:尾形文繁)

今は何がベストかを学んでいる最中だ。正しく提案をしていけば、ハブプログラムは倍々に成長していくと思っている。

――昨今はデリバリープロバイダのドライバーから「荷物量が多い」との声も上がっています。負担増にどう対応していきますか?

ドライバーの方が契約しているのはデリバリープロバイダで、アマゾンはデリバリープロバイダとの契約になっている。彼らがドライバーを雇い、トレーニングを提供し、同じ労働条件が提供されているわけだ。

ドライバーの安全な環境を構築することは重要だ。アマゾンも安全に関するガイダンスなどを提供している。また、置き配は非常に大きな助けになっている。再配達を減らせるので、ドライバーにとっても、お客様にとっても便利だ。

――アマゾンの配送サービスはかなり利便性が高いものです。送料無料となる日本のプライム会員の価格(年間プラン4900円、月間プラン500円)は安すぎませんか?

私たちの立場からすると、利便性を提供して、早く荷物を届けることが焦点だし、それに基づいた努力をしている。「払っただけの価値がある」と思ってもらえているのはありがたい。

(田邉 佳介 : 東洋経済 記者)

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