浦尾悠子 千葉大学子どものこころの発達教育研究センター・特任講師
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最終回は「勇者の旅」プログラムの展開についてお話しします。「勇者の旅」は、2017年以降に日本全国の学校で実施できる体制が整い、現在までに100以上の学校で実践されています(写真参照)。当初は小学生向けにワークブックを作成しましたが、中学校や高校からも実施を希望する声が増えたため、中高生向けのワークブックも新たに作成し、現在は中学校や高校でも実践されるようになりました。
そんな中、コロナ禍では誰もが先の見えない不安を抱えることとなりました。中でも20年度の緊急事態宣言に伴う休校期間中は、「こういうときこそ、子どもたちにプログラムを届けたいのに‥」と、歯がゆい気持ちになりました。そこで、昨年度より「勇者の旅」e-learning版の開発に着手することにしました。今後、このe-learning版の研究で実施可能性が確認できれば、将来的には子どもたちが1人1台端末を使って、誰でも「勇者の旅」を受講できる形になるのではないかと期待しています。
なお、コロナ禍では先生方への対面での研修会開催も難しくなってしまいましたが、オンラインへと切り替えたことで、全国各地から研修会にご参加いただけるようになりました。今後も、時代の変化や世の中のニーズに合わせて柔軟にプログラムを展開していけたらと考えています。
最後に、「勇者の旅」の展開に関連して、私が日頃から感じていることをお話しして終わりにしたいと思います。
「勇者の旅」を通して認知行動療法について学んだり、メタ認知の力を付けたりすることは、子どもたちのメンタルヘルスの問題を考えてもとても大切だと考えています。ただ、「勇者の旅」さえ実施すればメンタルヘルスの問題が改善するかと言えば、もちろんそうではありません。
子どもが不安を感じるとき、その認知や行動に大きな影響を与えているのが、その子を取り巻く「環境」です。子ども本人がいくら熱心に認知行動療法について学び、メタ認知を鍛えたとしても、取り巻く環境がその子にとって不安なものであれば、その環境を「安心できる環境」へと変えない限り、その子の不安を根本的に取り去ることはできないのです。
そういった面からも、「勇者の旅」プログラムを学校の授業に組み込むことが、学校環境を安心できるものへ変えていくための大きな一歩になると私は考えています。このプログラムの導入を一つのきっかけとして、子どもたちにとっても先生方にとっても安心できる学校環境をつくっていくにはどうすればよいかを皆で考えていけたらうれしく思います。
(おわり)
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