俳優の窪田正孝が主演を務めるNHK連続テレビ小説『エール』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか)が、30日にいよいよスタートする。放送を前に主演の窪田にインタビューし、本作への思いや役作りについて聞いた。
■『エール』で描く夫婦の形は理想「ないものを補い合っている」
朝ドラ102作目となる本作は、全国高等学校野球大会の歌「栄冠は君に輝く」や阪神タイガースの歌「六甲おろし」など、スポーツシーンを彩る応援歌の数々を手掛けた福島県出身の作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏をモデルに、音楽とともに生きた夫婦を描く物語。古関氏をモデルにした主人公・古山裕一を窪田、妻となる関内音を二階堂ふみが演じる。
『ゲゲゲの女房』(2010)、『花子とアン』(2014)に次いで3度目の朝ドラ出演となる窪田。「朝ドラは家族や親戚が毎日欠かさず見ていて、出演が決まったときに喜んでくれて、すごくワクワクし、自分の家族や親戚を喜ばせてあげたいという気持ちになりました。それができないとたくさんの視聴者の方を喜ばすことはできないだろうなと思いました」と、朝ドラへの特別な思いを告白した。
男性が朝ドラの主演を務めるのは、玉山鉄二が主演を務めた2014年度後期『マッサン』以来6年ぶりとなるが、「主役だからどうという考え方はあまりなく、僕の中で一番の朝ドラの顔はふみちゃん。彼女が一番輝ける瞬間をたくさん作れたらいいなと思っています」との考え。また、裕一と音の夫婦の形は理想的だと感じているようで、「同じ音楽だけどジャンルが違って、作曲家と声楽家というところで、お互いにないものを補い合っているのはすごく理想」と話した。
撮影は昨年9月に開始。「朝ドラはスケジュールが独特で、基本的に土日は休みで、月曜から金曜までNHKに通ってスタジオで撮る。たまにロケ。現代のものではないのでタイムスリップした感じで、新しいセットで新しい出会いをしていくのがすごく楽しいですし、1年間かけて撮影する作品はなかなかないので、それが大きな違いかなと思います」とほかの作品との違いを説明し、「NHKに毎日通うのは、会社に通っている社員のような気持ち。リズムが定期的に決まっているほうが僕は楽なので助かっています」と規則正しい生活が合っているようだ。
■「誰も敵に回さない」古関裕而氏の人柄を大事に
演じる古山裕一のモデルとなっている作曲家・古関裕而氏については「敵が誰もいない。誰も敵に回さない。古関さんを知っている人も古関さんの悪口を言わない」と印象を述べ、「それがすべてだと思っていて、そこを役作りでも肝にしています」と演じる上で大切にしている。「媚びを売るとか、誰かに好かれるために自分に嘘をつくということではなくて、誰かを憎んだり怒ったりしない。その瞬間があっても、そのあと必ず憎しみが愛情に変わっている気がしていて、煙たがられても音楽の力や古関さんの人格が大きく包み込むイメージがあるので、そこは一番大事にしなければいけない部分かなと思っています」と説明した。
福島にある古関裕而記念館も訪れ、そこで知った古関氏についての情報も役作りに生かしているそう。「ただ、あくまで古関さんをモデルに、古山裕一と関内音を描いているので、勉強しすぎて台本よりも先に行きたくない気持ちがあり、極力情報を入れないようにしています」と言い、「台本読んでいるときは古関さんのことを考えるんですけど、現場でセリフをしゃべってみると腑に落ちない部分があったりするので、そういうときは現場で起こるものを信じて、監督の演技指導を信じて貫いています」と語った。
約1年間かけて作り上げていくのは朝ドラならでは。「1年間役にどっぷりつかれる環境、1つの役を掘り下げていけるのは、朝ドラをやる一番のいいところ」と充実感をにじませ、「朝ドラを経験された方から『朝ドラを経験するとどの現場もすごく楽に感じると思うよ』と言ってもらい、その気持ちはすごくわかる。1人の人生を一生で描くと深みも出てくるし、役を作ろうと考えなくなって、自然とカメラの前に立つとすーっと入っていける感覚になる。時間をそれだけ犠牲にすればそれだけのものが返ってくるので、1年後はたぶん達成感に満ちあふれているんじゃないかなと思います」と完走後の成長を想像した。
そして、若い時代よりも、年齢を重ねてからの演技にプレッシャーを感じているそうで、「見ただけでこの人、年とってるなって思われるように。自分が尊敬する人をイメージしながら作っていけたら。ただ、古関さん自身は大人になってもそんなに変わっていないので無理に気負わず。老けメイクの力も借りつつ、言ってることが周りから古くさいって思われるくらい、愛嬌のある良いおじさんになっていられるように頑張りたいと思っています」と意気込む。
■ハーモニカ、指揮、楽譜の書き方…1カ月前から猛特訓
撮影が始まる約1カ月前から音楽に関するさまざまなレッスンも受けて準備してきた。「ハーモニカ、指揮、楽譜の書き方、オルガン…短時間の中でいろいろ教えていただいて、クランクインしてからも合間にリハーサル室でハーモニカの先生が待っているという感じでした」と明かし、「個人的には指揮が好きです。難しいけれども楽しいですし、演奏家の方がプロの方たちなので、僕が指揮を振るとそれに合わせてくれる気持ち良さもあるので」と笑顔で話した。
また、「1人でハーモニカを吹くシーンは実際の生音を使っているので、緊張というか、何とも言えない感覚になるんですけど、そのときの心情によって違ってくる。人生どん底の中でハーモニカを吹くシーンでは、音にならない音になって、ちょっと音が外れてしまったんですけど、『音楽としては成立してないけど気持ちを表すという意味では成立しているからOKです』という監督の決断で使われることになって、誰かのために吹くと音も変わるし、誰かのために振る指揮棒の強さとか、そういうのはシーンごとにすごく感じます」と語った。
窪田自身が励まされた思い出の楽曲は「大地讃頌」で、「中学3年生のときに文化祭で指揮者をやらせてもらったことがあって、そのときの課題曲が『大地讃頌』。高校に上がることへの不安や、部活のバスケが終わってこの先どうしようって悩んでいたときに聞いていたので、僕の中ですごく大切な曲。今もたまに聴いています」と説明。さらりと指揮者経験を明かしたが、「高校に入りやすくするため…ウソです! ジャンケンで負けてやることになりました」と冗談を交えて経緯を伝えた。また、「『栄冠は君に輝く』は僕にとってもルーツの音楽。野球少年だったので」と話した。
■早くも福岡弁を習得「一番指導されなくなった方言」
福島弁にはすっかり慣れてきたそうで、「福島弁指導の先生からもあまり言われなくなってきて、それくらい馴染んでいます。これまで大阪弁とかいろいろやりましたが、福島弁が歴代史上一番、指導されなくなった方言。自然と小さい『っ』を抜いたり、ポイントがわかってきました」と自信。「すごく愛嬌があるし、福島弁を聞いているだけでほっこりしたり、愛情が持てるというか、愛くるしくなる感じがあります」と魅力を語った。
「(自然に)けっこう出ますよ!」と福島弁のイントネーションも披露し、「(語尾が)上がっていく中で、ちょっとずつ変わっていく感じ。めちゃめちゃ面白いですね。古山家の中でも、(父役の)唐沢(寿明)さんがしゃべる福島弁はまた全然違うし、お母さん役の菊池(桃子)さんの福島弁もまたちょっと違って、音楽を聴いている感じにもなるんです」と熱弁した。
■プロフィール
窪田正孝
1988年8月6日生まれ、神奈川県出身。2006年にドラマ『チェケラッチョ!! in TOKYO』(フジテレビ)で初主演を務める。2012年、映画『ふがいない僕は空を見た』でヨコハマ映画祭最優秀新人賞、高崎映画祭最優秀助演男優賞。2014年度前期NHK連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインに想いを寄せる青年・木場朝市を演じ、お茶の間の注目を集める。主な出演作品は、ドラマ『平清盛』(NHK)、『ケータイ捜査官7』(テレビ東京)、『Nのために』(TBS)、『デスノート』(日本テレビ)、『ヒモメン』(テレビ朝日)、『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ)、映画『東京喰種トーキョーグール』など。
(C)NHK
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March 25, 2020 at 06:01AM
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