
大沢たかおが1月31日(金)公開の映画『AI崩壊』(入江悠監督・脚本)で主演を務める。人の生きる価値を選別し殺戮を始めたAIの暴走が描かれる物語。大沢は医療AI<のぞみ>を開発した天才科学者・桐生浩介を演じる。大沢は2016年からの約2年、俳優活動を休業していた。その理由を、経験を積んだ事で作品の先が見通せるようになり「面白くなくなってしまった」からだという。19歳で芸能界入りしたのも「スリリング」を求めて。それが失われたなか、その思いを感じる作品に出演しようと決めた。その一つが『AI崩壊』だった。ジャパンプレミアで邦画に危機を感じているとも語った大沢が本作にかけたものとは何か。【取材・撮影=木村武雄】
惹かれる規格外、復帰の理由
大沢は昨年12月に行われた完成報告会見でこう語った。
「私は2年くらい休んでいて、昨年ようやく現場に戻ってきました。メーターを振り切った挑戦している作品だけをやって自分の俳優人生を終わろうと決めて戻ってきました」
そして、台本を読んだときに受けた印象を語った。
「こんなに難しい台本を、これほどの予算をかけて勝負するところにロマンを感じました。自分も俳優人生をかけてぶつからないといけない、そう思って参加した作品です」
『AI崩壊』
破格のスケールで描かれる近未来サスペンス超大作。暴走したAIが人間の生きる価値を選別して殺戮を開始。しかしAI暴走のテロリストに断定され逃亡劇を繰り広げるのが医療AI<のぞみ>の開発者で、天才科学者の桐生浩介。容疑をかけられ逃走するも捜査AIの包囲網に遭い万事休す。絶体絶命の中でわずかな望みにかける。
――仕事を離れ、再び芝居に向かおうと思った気持ちは?
極端な事を言えば戻ってくる気はありませんでした。それは自分の中で明快な「何か」がない限り作品に臨んでも良い結果は出ないだろうと思っていたので。そもそも、ものすごいスリリングを求めて26歳でこの仕事を始めました。その時は1本の作品に出演できたらやめる気持ちでいました。やったことがない仕事でしたので衝撃的に大変で(笑)。誰よりも準備したという自負はありますし、その後の二十数年を比較してもあれほど頑張った1年はなかった。その感覚がずっと残っています。
当然、やればやるほど経験値は貯まるけれど経験は僕の中ではマイナスの一面もあると思っていて、例えば新しい発想が出てこなくなったり、「こうすればこうなる」という経験によって生まれる要領の良さで展開が読めるようになってきます。出演しなかった台本を含めてものすごい数の台本を読んできたことで、読んだ時点でその先のイメージが出来てしまう。そうしたこともあって自分の中で面白くなくなってしまったんです。だからこそ、もし出会えるならスリルを感じる作品をやって俳優を辞めようかなと。それが『キングダム』、イギリスの舞台『The King and I 王様と私』、そして『AI崩壊』でした。
どれも、普通にやっていたらうまくいかないし、簡単なイメージでやったら大失敗するという思いがありました。行けるところのギリギリまで表現して演じないと評価されないという考えが、形は違うけれど3つとも共通している点です。
――『AI崩壊』に興味を持たれた点は?
まず、AI自体に興味がありました。それと、入江監督の完全オリジナル脚本で、規格外の規模で製作されたという点です。今の時代、ここまで大規模な日本映画の製作にはトライできないですよね。エンターテインメントと言っても、今は逆方向で日常的な家族の話や高校生のラブストーリーが多くて、なるべく失敗しないという危険のない方向にいっている。でも自分はそこには興味がありませんでした。そのなかで『AI崩壊』は入江監督のオリジナル脚本ですし、入江監督の作品が好きだということもありますし、もしかしたら、自分の中での過去の経験値が全く通用しないもので、それこそ勝負に出ないと成立しないかもしれないと思えて。それがこの作品に興味を持った理由です。
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